「春節序曲」について

dlimcblog2015-07-21

 本年演奏する「春節序曲」について、以前に演奏したコンサートのプログラムから解説を抜粋編集して載せておきます。

李煥之作曲『春節序曲 : 大秧歌』
 この曲は1955年〜56年に作曲された管弦楽曲春節組曲』の第1楽章です。組曲は第2楽章『情歌』、第3楽章『盤歌』、第4楽章『燈会』からなります。「春節」は中国の伝統的な祭日で、日本の旧正月に当たります。この祭日には爆竹が鳴らされ、花を飾って新しい着物を着て、互いに新年を祝います。「組曲全体の音楽主題は多く陜北地区の秧歌調と民間哨吶(ダブルリードの楽器)の曲調を取り入れ、また舞踊のイメージという特色もあり、中華民族の伝統祭日の楽しい情緒と雰囲気を強く表現」しています。陜北地区は中国中部の陜西(せんせい)省、延安のあるところです。
 第1楽章の『序曲 : 大秧歌』の「秧歌」とは、もともと中国の地方農村に伝わる民間舞踊です。大勢が一緒に踊る楽しい舞踊という点は日本の盆踊りと似てますが、激しいリズムと昂ぶる曲調が特徴です。「踊る時は皆色とりどりな鮮やかな着物を着て、両手で腰に纏っている赤い絹の端を引っ張ったり、或いはきれいなハンカチや扇子などを手にして、太鼓やドラなどのリズムと哨吶等の楽器のメロディーにしたがって、踊りの列の形を変えながらねり歩く。大変熱烈で、にぎやかなことから俗に「秧歌の騒ぎ」とも言われる」そうです。
 第1楽章の『序曲 : 大秧歌』は三つの部分からなり、第1部(Allegro)は2つのテーマ=二つの陜北民間哨吶の曲で、民族楽器の太鼓やドラの音響とマッチして、大秧歌の楽しい雰囲気が表現されています。中間部(Moderato)のテーマは、抒情的でのどかな陜北のソロ秧歌調。オーボエからチェロ、トランペットのソロへ移り、第1部の再現へ入ります。

作曲者の李煥之(り・かんし、Li Huanzhi、1919‐2000)は香港生まれ、1936年に上海音楽学院の前身である上海国立音楽専門学校入学。1938年に革命の本拠地延安で延安魯迅芸術学院音楽学部に学ぶ。1949年新中国成立後は中央民族楽団団長、中国音楽家全国協会主席等を歴任。声楽、器楽に多くの作品を残し、また論文や音楽理論の著作も多い。

参考文献:新交響楽団『中国作品展 : 新交響楽団第115回演奏会プログラム』(1987)掲載の「作曲家と作品解説」(王耀華・日中友好音楽事務所長執筆)
http://d.hatena.ne.jp/nipponica-vla3/20150720